脳神経外科学講座
講座紹介
昭和医科大学 脳神経外科 諸藤 陽一
私は2025年4月1日付で、昭和医科大学医学部脳神経外科学講座の主任教授を拝命いたしました。これまで長崎大学をはじめとする医療?教育?研究の現場で、脳神経外科医としての臨床経験を積み重ねるとともに、脳血管障害?血液脳関門の基礎研究、後進の育成に努めてまいりました。
脳神経外科は、脳卒中、脳血管障害、脳腫瘍、機能的疾患(顔面けいれん、三叉神経痛)、てんかん、脊椎脊髄疾患、頭部外傷、小児領域に至るまで多岐にわたる専門領域を有する分野であり、常に最先端の知識と技術、そして総合的な判断力が求められます。私はこれまで、血管内治療(カテーテル治療)と直達術(開頭手術)の両面からアプローチする総合的な脳卒中治療?脳血管障害の治療の確立に取り組んできました。今後は昭和医科大学という新たな場において、患者さん一人ひとりに最適化された医療を提供することを第一に、脳神経外科医としての質をさらに高めていく所存です。
188体育面においては、特に脳血管内治療の分野において、最新の技術と安全性の高い治療戦略を導入し、急性期脳梗塞に対する血栓回収療法、くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤へのコイル塞栓術、フローダイバーター留置術、さらには硬膜動静脈瘻、脳動静脈奇形など複雑な血管病変に対する治療に力を入れています。これらは、チーム医療による迅速な意思決定と、高度な画像解析?ナビゲーション技術に支えられて初めて可能になるものであります。また、救命救急科、脳神経内科、放射線科、麻酔科、リハビリテーション科など他188体育科との連携、看護部、放射線部を含めた多職種との連携を強化することで、患者さんを多方面から支えることも私の重点施策の一つです。
教育面では、未来の脳神経外科を支える若手医師の育成に強い使命感を持っています。臨床力に加え、科学的な視点、国際的な感覚、そして倫理観を兼ね備えた人材を育てることが、大学の重要な責務であると考えています。医学生、初期研修医、専攻医、大学院生に対しては、段階的かつ実践的なカリキュラムを整備し、指導体制の充実を図ります。また、国内外の研修?留学の機会を積極的に提供し、外の世界に触れ、自らの立ち位置を再認識できるような環境も整えてまいります。
研究においては、これまで私が取り組んできた血液脳関門(BBB)に関する研究を中心に、脳血管障害?脳腫瘍における分子病態の解明や薬剤送達システム(DDS)の開発など、基礎医学と臨床医学の架け橋となるトランスレーショナルリサーチを重視しています。臨床の現場で生まれる課題を研究室に持ち帰り、科学的検証を経て再び臨床へと還元するという循環型の研究体制を構築していくことが、これからの大学に求められる姿であると考えています。研究成果は国内外の学会や国際誌で発信し、昭和医科大学のプレゼンスを高めることにも貢献したいと考えています。
昭和医科大学脳神経外科は、これまで多くの優れた臨床医を輩出してきた伝統ある教室です。現在も、顔面けいれん?三叉神経痛に対する神経血管減圧術、脳腫瘍に対する手術および集学的治療、下垂体腫瘍に対する経鼻内視鏡手術、てんかんの外科、脳血管障害治療において、豊富な症例数を有しています。昭和医科大学の歴史および確固たる地盤を受け継ぎながら、現代の医療環境や社会的要請に応える新たな価値を創造していくことが、私に与えられた使命であると受け止めています。
「患者さん中心の高度かつ包括的な医療の実践」「次世代を担う脳神経外科医の育成」「革新的研究と国際的貢献」という三本柱を教室の理念として掲げ、スタッフ一丸となって日々研鑽を重ねてまいります。今後とも、昭和医科大学脳神経外科の歩みに温かいご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
研究の概要とテーマ
研究テーマ(主担当者)
- 脳ドックと連携した未破裂脳動脈瘤の疫学的研究(水谷)
- ワークステーションとフュージョン画像を用いた手術シミュレーションに関する研究(水谷)
- 口腔内細菌と脳神経疾患との関連(清水)
- 安全有効なな後頭蓋窩開頭法に関する研究(清水)
- カダバーを用いた頭蓋頚移行部の解剖に関する研究(清水)
- 医療用画像の研究と3Dフュージョン画像への応用(松本)
- てんかん脳波の非線形デジタル解析(佐藤)
- てんかん病理と脳波の関係性の研究(佐藤)
- 高密度(256チャネル)脳波を用いたてんかん原性部可視化技術の開発(佐藤)
- インドシアニングリーン輝度解析によるバイパス術後過灌流症候群の術中予測法の開発(佐藤)
- マルチモダリティMixed Reality(MR)技術によるてんかん外科術中イメージングの研究 (佐藤)
- 原発性悪性脳腫瘍患者に対する標準治療成績を調査するコホート研究 (MG-Control Study)(小林)
- 脳腫瘍の遺伝子解析ならびに薬剤感受性の検討(小林)
- Mixed Reality技術による術前シミュレーションの有効性とその将来性に関する研究(飯塚)
沿革
脳神経外科学教室のあゆみ
当教室は、1962年5月 松井 将外科助手により脳神経外科の診察が開始されました。1968年4月松井助教授が初代脳神経外科学講座主任教授に就任され、昭和大学外科学教室の第3講座として脳神経外科を発足させました。この時から、脳腫瘍、脳血管障害、頭部外傷などの脳神経外科疾患全般にわたり188体育や臨床研究などがなされるようになりました。1989年3月に松井教授が定年退職され、同年4月に第2代脳神経外科主任教授として松本 清助教授が就任、1992年には専門医制度の確立や研究細分化などの諸事情により昭和大学外科学教室より脳神経外科学教室を分離独立させました。2002年3月松本教授は定年退職され、2002年5月、第3代脳神経外科主任教授として阿部琢巳講師が就任、2012年4月に第4代脳神経外科主任教授として水谷徹教授が就任され、現在の昭和医科大学脳神経科学講座教室の基礎を築かれ発展させました。そして、2025年4月より、第4代脳神経外科学講座主任教授として諸藤陽一教授が就任し、現在に至ります。
講座員
講座員紹介につきましては、昭和医科大学病院のページをご覧ください。昭和医科大学病院 > 188体育科のご案内 > 188体育科一覧 > 脳神経外科